くらしと健康
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内科医 白水 倫生

■放置してはダメ

 高脂血症とは、血中のコレステロールや中性脂肪などの脂質が異常に高い病態のことをいいます。高脂血症が良くない理由は、放置しておくと動脈硬化性疾患(労作性狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳や頸動脈の狭窄や閉塞による脳血管疾患、四肢の冷感や疼痛を起こしうる閉塞性動脈硬化症など)を発症するおそれが高くなるからです。いずれも命の危険が生じたり、重篤な後遺症を残す可能性があります。

■治療の目安

 高脂血症の治療については2002年に日本動脈硬化学会からガイドラインが発表されています。(表1・表2参照)。喫煙や年齢、高血圧や糖尿病の有無、冠動脈疾患の家族歴により、目標値が異なります。動脈硬化性疾患の予防という観点からはガイドラインが役立ちます。高脂血症は、遺伝や女性の閉経後などの悪化素因がありますが、ライフスタイルの改善により脂質の数値の減少が期待されます。その上で必要に応じて薬物療法が行われます。
 さらに個別の医療という点では、実際に動脈硬化が生じているか判断することが大切です。しかも非侵襲的な検査で診断可能です。例えば、心臓の冠動脈疾患についてはトレッドミルなどの負荷心電図、頸部血管の動脈硬化をみるには頸動脈エコー、頭の血管をみるには頭部のMRIやMRAがあります。ですから、実際の動脈硬化度を測定しながら治療を受けることが可能になります。

■薬も必要

 次に、薬物療法の問題点について、触れます。
 最近、話題になりました横紋筋融解症というのは、筋肉が溶けて筋肉の成分であるミオグロビンという物質が大量に血中に溶け出した結果、腎臓に障害を来たし、場合により急性腎不全に至る病気です。しかし、高脂血症の薬物療法による横紋筋融解症は大変まれな病態であり(おそらく、ほとんどの医師は一生経験せずにすむと思います)、病状を起こすとしても薬物療法が始まって一年以内、しかもそのうち半数近くが二カ月以内だと統計的に調べられています。ですから、薬物療法後の筋肉痛の有無それから血液検査でのCPK(筋肉からの逸脱酵素)のチェックでほぼ判断がつきます。患者・医師双方の注意でまず発見される病態と考えられます。
 それからコレステロールを下げすぎると脳出皿を起こす確率が高くなるといわれていますが、これは、治療による低コレステロールの結果ではなく栄養障害によるものだと考えられます。ところが、低コレステロールによる精神的なうつ症状はある程度あり得るようで、目標数値を考えた治療が必要です。

表1:高脂血症の診断基準(血清脂質値:空腹時採血)
高コレステロール血症 総コレステロール ≧220mg/dl
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール ≧140mg/dl
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール <40mg/dl
高トリクリセリド血症 トリクリセリド ≧150mg/dl

表2:患者をLDLコレステロール値以外の主要冠危険因子の数により分けた6群の患者カテゴリーとその管理目標値
患者カテゴリー
脂質管理目標値(mg/dL)
その他の冠危険因子の管理
  冠動脈
疾患*
LDL−C以外の主要冠危険
因子**
TC
LDL-C
HDL-C
TG
高血圧
糖尿病
喫煙
A
なし
0
<240
<160
≧40
<150

高血圧学会の
ガイドライン
による

糖尿病学会の
ガイドライン
による
禁煙
B1
1
<220
<140
B2
2
B3
3
<200
<120
B4
4以上
C
あり
 
<180
<100
TC:総コレステロール、LDL-C:LDLコレステロール、HDL-C:HDL コレステロール、TG:トリクリセリド

*冠動脈疾患とは、確定診断された心筋梗塞、狭心症とする。

**LDL−C以外の主要冠危険因子
  加齢(男性≧45歳、女性≧55歳)、高血圧、糖尿病(耐糖能異常を含む)、喫煙、冠動脈疾患の家族暦、
  低HDL−C血症(<40mg/dL)


・原則としてLDL−C値で評価し、TC値は参考値とする。
・脂質管理は先ずライフスタイルの改善から始める。
・脳梗塞、閉塞性動脈硬化症の合併はB4扱いとする。
・糖尿病があれば他に危験因子がなくともB3とする。
・家族性高コレステロール血症は別に考慮する。

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